+ + + + + + + + + +
この期に及んで湯呑みを握っている、酒に汚いひとに呆れつつ、取り上げようと伸ばした手を叩かれる。
「ちょっと待って下さい」
イルカはベッドに座り込んで残りの酒を煽り、こぼれないように湯呑みを塞いでいた掌を舐めた。
ぞろりと動く桃色の舌。
いやらしい。
ようやく湯呑みを床に置いたイルカを押し倒し、首筋に顔を埋めたところで、思いきり後ろ髪を掴まれた。
「あのね、ここで焦らされても困るんですけど」
髪を引っ張られるまま渋々と身を起こし、いい加減、苛立って言うのに、イルカの苦笑が返ってくる。
「釦が痛いんです」
言いながら、パジャマの釦を外してゆく。
「俺も、そんな余裕ないし」
言葉通りに急いた仕草で俺のパジャマを脱がせ、抱きついてきたイルカの躰は、確かな熱を帯びていた。
湯上がりの柔らかい肌に吸いついて、しなやかな筋の線を舌で辿る。
腰骨に掌を這わせ、ゆるく波打つ脇腹の古傷に軽く歯を当てると、ひくりと筋肉が緊張するのが指先に伝わってきた。
イルカのいいところ。
繰り返し唇で掠めるように触れるたび、吐息が乱れるから、たぶん。
女の躰ならそれなりに知っている。少なくとも、床あしらいに文句を言われたことはないし、言わせないだけの努力はしてきたと思う。
だが、同性と共にした閨など両手で事足りるくらいで、しかも、相手はすべて同じひとだ。情欲を感じるほどに焦がれた男など、他にはいない。
それはイルカも一緒。
男同士だから、一番気持ちのいいところは変わらないと分かっているが、それ以外は勝手が違い過ぎ、聞き覚えた知識や経験からは察しようもない。
ままならない快楽の兆しに縋って、互いに躊躇いながら肌を合わせているというのに、求める欲ばかり強くある。
―――俺をみんな、あげたいよ。
何もかも欲しい。
イルカの噛み殺す喘ぎや、俺の名前を呼ぶ声や、シーツを掴む掌の中にあるものも、余さず全部。
そんなふうに身を繋ぎ心を分かち合い、融けてひとつになりたいと思う。皮膚が隔てる境目が分からなくなるほど抱き合ったまま、どろどろに溶けて気持ちよくなれたらいい。
もどかしい思いに駆られながら、文字通り手探りで、組み敷いた身にひそむ熱の源を追っていた。
絡み合う体温が、部屋の空気をぬるくこもらせる。
荒く湿った息づかいと、擦れ合う肌を疼かせる熱と。
そういうものを堪えるように眉を顰めながら、もどかしげに身を寄せてくる昂ぶり潤んだイルカの様子に、どうしようもなく欲情した。
イルカの肉の狭間を探って。
慣れない場所が拒むのを、宥めるように慣らして。
奥深くへと潜り込むと、太腿の上に抱え込んだ腰が跳ねた。
熱く狭い粘膜のもたらす感覚に煽られ、滲む汗にけぶる躰を揺さぶり穿つたび、食いちぎられそうなほど締めつけられる。
ちょっと、きつい。
「―――…っ…痛ぇ」
くぐもった低い呻きに、思わず動きが止まった。
「え……大丈夫?」
意地っ張りのイルカが口にするなら、それ相応の筈だ。
いくらか慌てて片手を伸ばし、半ばシーツに埋まったイルカの横顔を覆う髪を掻き上げれば、恨みがましい流し目が向けられた。
「痛い、です」
ぼそりと地を這う声音に紡がれた事実も、また痛い。
結構な深手だ。
自分の可愛いひとを悦ばせてあげたいのに、できないというのは。
指先に触れる乱れた黒髪を梳いて、できれば聞かせたくない言葉を、仕方なく舌に乗せた。
「ごめんね」
他に何が言える。
イルカの前では小心で繊細になるらしい俺は、膝を抱えて泣き出したいくらいのダメージに、色々と項垂れてしまう。
おずおずと身を引きかけると、強く両腕を掴まれた。
「ったく。なんて面してるんですか、もう」
咎めるようなイルカの声は千の針。
苛めないでよ。
―――ホントに泣きそう。
不意にイルカが上半身を起こした。腹筋だけで。
―――言えた義理じゃないけど、色気なさ過ぎ。
困惑する俺の両肩を掴んで、イルカは体当たりでもするように、いや、思いきり体当たりで俺をのけ反らせた。
「わ、イルカ先生っ」
「素直に寝ろ!」
語勢に従い、素直に半身を背後へ倒すと、自然、イルカは俺の腰に馬乗りになった。
半ば繋がったまま。
「乱暴ですね……折れたらどーすんですか」
傷心のあまり、ぼんやりと文句を言えば、素っ気ない答えが返る。
「折れてないようですから、別にどうも」
そうじゃなくて。
何だか物悲しい気分が押し寄せ、続く言葉が出なかった。
頭上から溜め息が落ちてくる。
「カカシ先生、何てゆうか……その、カカシ先生の所為じゃありませんから」
「……すごい追い打ち」
「違うって。いや、だから…――慣れてないから。もうちょっと、ゆっくり?」
珍しく歯切れ悪く言うひとを見上げると、何故か貌を真っ赤にして、あらぬ方を睨んでいる。
「眼ぇ閉じてて下さい」
「何で?」
答えはなく、代わりに堅い掌が俺の両目を覆った。
どうして、と問いかけた口に、柔らかなものが押し当てられる。
驚いた。
イルカの方から口接けてきたことも、唇を甘噛みされた上に、舌が入ってきたことも。
恥ずかしがっているのか、横着なのか、たぶん両方の理由でイルカは、いつも俺のすることに応えはするものの、どちらかといえばマグロだ。半解凍くらいの。
俺だって、受け身となったら勝手は違うし、どうすればいいのか分からなくなるだろうから、それは仕方がない。
けれど、でも。
―――なんか、気持ちいいんですけど。
あんまり巧くない、というか、一生懸命な感じの舌が。
時折、口の端にかかる吐息や、両眼を隠す掌のぬくもりが気持ちよくて、醒めた筈の部分に熱が集まってゆく。
ん、と鼻にかかった声を漏らして、イルカが身じろいだ。
納まりの悪そうな腰を掴んだ手を、引き剥がされる。
「駄目です、まだ」
動かないで、と念を押して離れてしまった唇が惜しい。
「イルカ先生?」
不意に変じた気配に問うてもいらえはなく、視界を閉ざす手を除けようとすれば、
「動くな」
鋭い叱咤が飛ぶ。
そんなこと言われても。
深い吐息とともに、呑み込まれてゆく感覚。狭くて熱い粘膜に覆われ、呼吸のたびに締めつけられて、腰骨の辺りがぞくぞくする。
ゆっくりと降りてきた肌が触れ、イルカの体重が下腹に乗った。
荒い呼吸にまじる、ちいさな喘ぎに煽られて。何より、イルカがこんな体勢で、自ら俺を含んでいることに、ひどく興奮していた。
「ねぇ、見たい」
「っ……やかましい」
悪態すら湿って、甘く鼓膜を震わせるのに、俺の視界は奪われたまま。
頬を上気させ眉根を寄せる、なまめかしい表情が脳裏に閃く。下唇を噛んで耐える癖。指先でイルカの貌を探ると案の定、そうしていることに昂ぶった。
ふと気づけば、イルカの腰が浮いて、もじもじと揺らめいていた。
「―――んっ……う…」
くぐもった声がこぼれ落ち、硬い髪の毛先が胸を擽る。
繋がったところから、くちくちと濡れた音が響く。
手探りで捕らえたイルカも、潤んでいて。
「や……!」
手の中のものを扱き上げると、制止の声が呻きに変わった。何かを堪えるようなそれは、苦痛の為ではないと、脈打つ熱が教えてくれる。
イルカだけじゃなく、俺も。
「ね、いい?」
我慢できなくて、返事を待たずに突き上げた。
「うぁ!……っ…」
びくん、とイルカが跳ね、弓なりに身を反らす。
そのまま尻を掴んで揺さぶれば、イルカは両手で俺の胸を押し返し、嫌々をするように頭を振った。
乱れた髪の透き間に、潤み溶けた表情が見え隠れする。その、眦に朱を刷いて睨む眼差しにさえ、熱が滾る。
欲に火照った躰に誘われるまま、つよく揺さぶって、掻き回して。
自分から腰を振りながら、嬌声を噛み殺す様子に、また誘われて。
「……ふ………カカ、シっ…せんせ……そこッ」
「んー……っと、ここ?」
「!…そこ、駄目だ……ッ」
「駄目に、なっちゃうくらい……悦い?」
馬鹿野郎、って、そんなにのぼせた貌で言われても、可愛いだけだし。
そもそも、駄目になりそうなのは俺の方だ。
見たこともないくらいに乱れて、それでも、必死に流されまいとしているような、イルカの。
ふと、不安げに俺を見る、濡れた双眸に酔わされる。
―――ごめんね。
人一倍、照れ屋なのに、こんなことまでさせて。
邪険に罵りながら、いつも俺の心配ばかりしている可愛い人。
―――何だか俺、むちゃくちゃ愛されてる気がするんですけど。
きっと、正解。
「イルカ先生……好きです」
切羽詰まって、掠れた声で思いの丈を伝えると、イルカは身を震わせ、強くしがみついてきた。
俺も、と囁く泣き笑いのような貌が、愛しくて。
愛しいと思う気持ちと、躰の奥に凝った欲とが、ぐちゃぐちゃになって。
腕の中にある心地良い温もりと、溶け混じる。
一刹那。
夢中で抱き締めたのは、世界で一番、優しくて甘いものだ。
俺だけの。
〈終〉
【前2002/11/20:後2002/12/23〜2003/01/21「イルカさんの部屋」】
【2003/08/14改稿】
「ちょっと待って下さい」
イルカはベッドに座り込んで残りの酒を煽り、こぼれないように湯呑みを塞いでいた掌を舐めた。
ぞろりと動く桃色の舌。
いやらしい。
ようやく湯呑みを床に置いたイルカを押し倒し、首筋に顔を埋めたところで、思いきり後ろ髪を掴まれた。
「あのね、ここで焦らされても困るんですけど」
髪を引っ張られるまま渋々と身を起こし、いい加減、苛立って言うのに、イルカの苦笑が返ってくる。
「釦が痛いんです」
言いながら、パジャマの釦を外してゆく。
「俺も、そんな余裕ないし」
言葉通りに急いた仕草で俺のパジャマを脱がせ、抱きついてきたイルカの躰は、確かな熱を帯びていた。
湯上がりの柔らかい肌に吸いついて、しなやかな筋の線を舌で辿る。
腰骨に掌を這わせ、ゆるく波打つ脇腹の古傷に軽く歯を当てると、ひくりと筋肉が緊張するのが指先に伝わってきた。
イルカのいいところ。
繰り返し唇で掠めるように触れるたび、吐息が乱れるから、たぶん。
女の躰ならそれなりに知っている。少なくとも、床あしらいに文句を言われたことはないし、言わせないだけの努力はしてきたと思う。
だが、同性と共にした閨など両手で事足りるくらいで、しかも、相手はすべて同じひとだ。情欲を感じるほどに焦がれた男など、他にはいない。
それはイルカも一緒。
男同士だから、一番気持ちのいいところは変わらないと分かっているが、それ以外は勝手が違い過ぎ、聞き覚えた知識や経験からは察しようもない。
ままならない快楽の兆しに縋って、互いに躊躇いながら肌を合わせているというのに、求める欲ばかり強くある。
―――俺をみんな、あげたいよ。
何もかも欲しい。
イルカの噛み殺す喘ぎや、俺の名前を呼ぶ声や、シーツを掴む掌の中にあるものも、余さず全部。
そんなふうに身を繋ぎ心を分かち合い、融けてひとつになりたいと思う。皮膚が隔てる境目が分からなくなるほど抱き合ったまま、どろどろに溶けて気持ちよくなれたらいい。
もどかしい思いに駆られながら、文字通り手探りで、組み敷いた身にひそむ熱の源を追っていた。
絡み合う体温が、部屋の空気をぬるくこもらせる。
荒く湿った息づかいと、擦れ合う肌を疼かせる熱と。
そういうものを堪えるように眉を顰めながら、もどかしげに身を寄せてくる昂ぶり潤んだイルカの様子に、どうしようもなく欲情した。
イルカの肉の狭間を探って。
慣れない場所が拒むのを、宥めるように慣らして。
奥深くへと潜り込むと、太腿の上に抱え込んだ腰が跳ねた。
熱く狭い粘膜のもたらす感覚に煽られ、滲む汗にけぶる躰を揺さぶり穿つたび、食いちぎられそうなほど締めつけられる。
ちょっと、きつい。
「―――…っ…痛ぇ」
くぐもった低い呻きに、思わず動きが止まった。
「え……大丈夫?」
意地っ張りのイルカが口にするなら、それ相応の筈だ。
いくらか慌てて片手を伸ばし、半ばシーツに埋まったイルカの横顔を覆う髪を掻き上げれば、恨みがましい流し目が向けられた。
「痛い、です」
ぼそりと地を這う声音に紡がれた事実も、また痛い。
結構な深手だ。
自分の可愛いひとを悦ばせてあげたいのに、できないというのは。
指先に触れる乱れた黒髪を梳いて、できれば聞かせたくない言葉を、仕方なく舌に乗せた。
「ごめんね」
他に何が言える。
イルカの前では小心で繊細になるらしい俺は、膝を抱えて泣き出したいくらいのダメージに、色々と項垂れてしまう。
おずおずと身を引きかけると、強く両腕を掴まれた。
「ったく。なんて面してるんですか、もう」
咎めるようなイルカの声は千の針。
苛めないでよ。
―――ホントに泣きそう。
不意にイルカが上半身を起こした。腹筋だけで。
―――言えた義理じゃないけど、色気なさ過ぎ。
困惑する俺の両肩を掴んで、イルカは体当たりでもするように、いや、思いきり体当たりで俺をのけ反らせた。
「わ、イルカ先生っ」
「素直に寝ろ!」
語勢に従い、素直に半身を背後へ倒すと、自然、イルカは俺の腰に馬乗りになった。
半ば繋がったまま。
「乱暴ですね……折れたらどーすんですか」
傷心のあまり、ぼんやりと文句を言えば、素っ気ない答えが返る。
「折れてないようですから、別にどうも」
そうじゃなくて。
何だか物悲しい気分が押し寄せ、続く言葉が出なかった。
頭上から溜め息が落ちてくる。
「カカシ先生、何てゆうか……その、カカシ先生の所為じゃありませんから」
「……すごい追い打ち」
「違うって。いや、だから…――慣れてないから。もうちょっと、ゆっくり?」
珍しく歯切れ悪く言うひとを見上げると、何故か貌を真っ赤にして、あらぬ方を睨んでいる。
「眼ぇ閉じてて下さい」
「何で?」
答えはなく、代わりに堅い掌が俺の両目を覆った。
どうして、と問いかけた口に、柔らかなものが押し当てられる。
驚いた。
イルカの方から口接けてきたことも、唇を甘噛みされた上に、舌が入ってきたことも。
恥ずかしがっているのか、横着なのか、たぶん両方の理由でイルカは、いつも俺のすることに応えはするものの、どちらかといえばマグロだ。半解凍くらいの。
俺だって、受け身となったら勝手は違うし、どうすればいいのか分からなくなるだろうから、それは仕方がない。
けれど、でも。
―――なんか、気持ちいいんですけど。
あんまり巧くない、というか、一生懸命な感じの舌が。
時折、口の端にかかる吐息や、両眼を隠す掌のぬくもりが気持ちよくて、醒めた筈の部分に熱が集まってゆく。
ん、と鼻にかかった声を漏らして、イルカが身じろいだ。
納まりの悪そうな腰を掴んだ手を、引き剥がされる。
「駄目です、まだ」
動かないで、と念を押して離れてしまった唇が惜しい。
「イルカ先生?」
不意に変じた気配に問うてもいらえはなく、視界を閉ざす手を除けようとすれば、
「動くな」
鋭い叱咤が飛ぶ。
そんなこと言われても。
深い吐息とともに、呑み込まれてゆく感覚。狭くて熱い粘膜に覆われ、呼吸のたびに締めつけられて、腰骨の辺りがぞくぞくする。
ゆっくりと降りてきた肌が触れ、イルカの体重が下腹に乗った。
荒い呼吸にまじる、ちいさな喘ぎに煽られて。何より、イルカがこんな体勢で、自ら俺を含んでいることに、ひどく興奮していた。
「ねぇ、見たい」
「っ……やかましい」
悪態すら湿って、甘く鼓膜を震わせるのに、俺の視界は奪われたまま。
頬を上気させ眉根を寄せる、なまめかしい表情が脳裏に閃く。下唇を噛んで耐える癖。指先でイルカの貌を探ると案の定、そうしていることに昂ぶった。
ふと気づけば、イルカの腰が浮いて、もじもじと揺らめいていた。
「―――んっ……う…」
くぐもった声がこぼれ落ち、硬い髪の毛先が胸を擽る。
繋がったところから、くちくちと濡れた音が響く。
手探りで捕らえたイルカも、潤んでいて。
「や……!」
手の中のものを扱き上げると、制止の声が呻きに変わった。何かを堪えるようなそれは、苦痛の為ではないと、脈打つ熱が教えてくれる。
イルカだけじゃなく、俺も。
「ね、いい?」
我慢できなくて、返事を待たずに突き上げた。
「うぁ!……っ…」
びくん、とイルカが跳ね、弓なりに身を反らす。
そのまま尻を掴んで揺さぶれば、イルカは両手で俺の胸を押し返し、嫌々をするように頭を振った。
乱れた髪の透き間に、潤み溶けた表情が見え隠れする。その、眦に朱を刷いて睨む眼差しにさえ、熱が滾る。
欲に火照った躰に誘われるまま、つよく揺さぶって、掻き回して。
自分から腰を振りながら、嬌声を噛み殺す様子に、また誘われて。
「……ふ………カカ、シっ…せんせ……そこッ」
「んー……っと、ここ?」
「!…そこ、駄目だ……ッ」
「駄目に、なっちゃうくらい……悦い?」
馬鹿野郎、って、そんなにのぼせた貌で言われても、可愛いだけだし。
そもそも、駄目になりそうなのは俺の方だ。
見たこともないくらいに乱れて、それでも、必死に流されまいとしているような、イルカの。
ふと、不安げに俺を見る、濡れた双眸に酔わされる。
―――ごめんね。
人一倍、照れ屋なのに、こんなことまでさせて。
邪険に罵りながら、いつも俺の心配ばかりしている可愛い人。
―――何だか俺、むちゃくちゃ愛されてる気がするんですけど。
きっと、正解。
「イルカ先生……好きです」
切羽詰まって、掠れた声で思いの丈を伝えると、イルカは身を震わせ、強くしがみついてきた。
俺も、と囁く泣き笑いのような貌が、愛しくて。
愛しいと思う気持ちと、躰の奥に凝った欲とが、ぐちゃぐちゃになって。
腕の中にある心地良い温もりと、溶け混じる。
一刹那。
夢中で抱き締めたのは、世界で一番、優しくて甘いものだ。
俺だけの。
〈終〉
【前2002/11/20:後2002/12/23〜2003/01/21「イルカさんの部屋」】
【2003/08/14改稿】
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