忍者ブログ
二次創作小説・主にカカイル
[52] [48] [47] [45] [43] [36] [29] [28] [5] [4] [3]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

古い、完成させていないお題から。
さびしんぼなカカイルの、ささやかな日常の断章。
カカシ×イルカ(♂/♂)


+ + + + + + + + + +
どうしようかと迷いながら、だが、行く先を定めた歩みはいつのまにか早くなった。
ひっそりと静かな通りを照らす街灯を、ひとつ過ぎふたつ過ぎ、目的の場所に近づくほどにカカシの足は軽くなり、ためらいは増す。
約束はしていたけれど。
ずいぶん遅くなってしまったから、彼はもう床に入っているかもしれない。いつもなら、とっくにそうしている時間だ。
まだ殻も軟らかいような忍の卵を三ダース、細々と気を配り面倒を見ている彼の、想像するだけでも疲れる日々を思えば、癒されるべき夜を奪うのは気が引ける。
―――明日だっていい。
一カ月もの里外任務の後なら一週間は休ませてもらってもいい筈だ。休ませろ。絶対休むと事務所でごねて、二日間の完全休暇をむしり取ったのは上々。
だから、待機所のベッドにもぐりこみ、のんびり過ごして明日の午後、アカデミーで彼を捕まえるのでも構わない。
彼の為にも自分の為にも、その方がいいに違いない、が。
―――でも。
足が勝手に先へと進む。
立ち止まろうとする気持ちと裏腹に、また一歩。
地面を踏むのももどかしげに急くのを、宥めるので精一杯。何でもないような顔をして普通に歩くのは、こんなに難しかっただろうか。
街灯。十字路の手前、古びた塀の途切れるところに、もうひとつ。
安っぽい橙色の光は、一番奥にある彼の部屋まで届かない。暗がりで悪戯。ドアに凭れてキス。離れ難いと聞き分けのない両腕を引きはがされ、もらった拳骨は痛いけど痛くない。
一カ月も懐深くしまい込んでいた記憶は、曖昧にぼやけながら情動だけがつよく残る夢のようだ。
―――もう、それでいいから。
こんな遅くにと仏頂面で玄関先、額にごつん、と。
それだけと願ってしまえば、自制心など簀巻きで蹴転がされる、ドアの前。
ようやく止まった両足と、落ち着きのなくなった心臓に勝手をするなと言い聞かせ、ドアへと伸ばしかけた右手は、再びポケットに収められた。
ひっそりとした部屋の空気は寝息に震える気配すらなく、気張った肩を落とさせる。
カカシは失望しつつも彼の行くあてを思いめぐり始めた、己の未練がましさに溜め息をつき、くるりと踵を返した。
途端、脳裏に閃きが走る。
もしかしたら、と思う気持ちよりも正直に、歩みは速い。



白っぽい店内から眩い光があふれ、道端にこぼれていた。
硝子ごしに目当ての姿を認め、カカシは通りに立ち止まる。
嬉しい。
彼に遭えたのが嬉しいから、飼い主を嗅ぎ当てた犬よろしく駆け寄りたい衝動を抑え、自分におあずけを命じる、これは遊び。
棚の前で小首を傾げ、さして興味のないふうに雑誌をぱらぱらと繰る、彼の様子を盗み見て、胸の浮き立つような、子供の悪戯じみた楽しさを噛み締めていた。
ふと。
小綺麗な店の中、ゆっくりと棚を巡ってゆく彼が薄く笑んで。
誰にともなく気が抜けたように笑った、その表情にカカシは息を詰める。
輝く硝子の向こう。
しんと眠る町並みに点々と灯る明かりをたどり、彼をみつけた場所へ、彼は何を探して来たのだろうかと。
明るい窓の向こうに。


「イルカせんせー」
「うおわっ」
イルカの肩を顎を乗せたまま、カカシの手は放り出された缶を受け止めた。
「驚きすぎ」
「って、驚かそうとしたくせに。根性悪すぎ」 
「えー……なに買ったの。ビール? じゃ、オレも」
カカシは半ダースのパックを掴み、イルカから取り上げた買い物カゴに突っ込む。ついでに、目についた肴を適当に。
イルカは、みるみるうちに一杯になったカゴを呆れ顔で眺め、次にはカカシを見て、すこし照れたように笑った。
「おかえりなさい。今?」
「そ。通りがかったら、ね」
些細な嘘を口にしながら会計を済ませ、それぞれビニール袋をひとつずつ提げて、夜道にふたつの影をつくる。
「通りがかりって、報告は済ませたんですか」
「うん。イルカ先生んとこ行く途中でした」
「こんな遅くに」
「あなたが寂しがってたらと思うと、いても立っても」
「けっ」
「けっ、て……ホントは寂しかったでショ」
「全然」
ふふん、と鼻で笑って先を行く背中は、いつもと変わらず。おそらく、どこか明るい場所を探していた子供の頃から変わらず。


影と荷物と、隠した嘘とが、ひとつずつ。
カカシは街灯の下でイルカに追いつき、その足元に丸く蟠る影に、己の影を添わせた。


〈了〉


2004/07/11〜2004/07/12
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
無題
こ、こんにちは!覚えていらっしゃいますでしょうか、カモシィです・・・!
ここ最近、忙しくて土日も寝たり萌えを充電したりしていたのですが、

カカイルを忘れた事はありませんでしたっ!

しかもこのコンビニ話がまた、最高です!な、和む〜!潤う〜〜!
特にイルカ先生の買い物かごにカカシ先生がぽんぽんビールやつまみを入れてくところが!こ、こども〜〜!可愛い〜!
カカシ先生がイルカ先生を好きで好きで大好きなところも、イルカ先生が寂しさ紛らわすためにコンビニへ行くのも、た、た ま ら ん です!!お幸せに!!(?

ああ、本当にgedohさんの描くカカイルに出会えてよかった・・・。ここのお陰で、私の抱いていたカカイル像が一変しました・・・
今までは、かわいい=イルカ,かっこいい=カカシというぐらいにしか掴めていなかったイメージが、

凄腕忍者のカカシにハウス!といって従わせることが出来る、男気あふれるトップブリーダー=イルカ
イルカ先生にベタ惚れでほとんどストーカーというか犬?になりつつあるヘタレィ=カカシ

というのもアリだなと、初めて自分の枠から飛び出る事ができました!!ありがとうございます!!そしてこんな形容しかできなくてすみません!!!

それでは、これから更新された分のお話を読みに行ってまいります〜!
カモシィ 2006/04/22(Sat) 編集
>カモシィさん
こんにちは、カモシィさん。
もちろん、忘れたりしませんとも。
拙文を読んでくださってありがとうございます。何かと忙しい時期ですが、無理をなさってお体など壊されませんように。

コンビニ話、気にってくださったようで嬉しいです。
私もカカイルのらぶらぶ話が好きなので。

かっこいいカカシも大好きでよく読むのですが、自分で書くときは気が優しすぎてヘタレ気味なカカシになりがちです。
かなり甘えっこで子供です。
まあ、そのへんは、イルカに対するカカシには大人の余裕があるということで!
イルカにだけ甘えてみせているということにしておいてください(笑)

上忍の格好良さと男の可愛げを併せ持っているカカシって素敵ですよね。
また、そういうカカシが大好きなのに照れ屋で素直になれないイルカ先生も大好物です。
今後もそんなカカイルをまったり書いてゆくつもりですので、またぜひ読んでやってください。
嬉しいコメントをありがとうございました!
gedoh 2006/04/22(Sat) 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
Counter
Search this site
mero
Barcode
Ninja point
Ninja
Powered by ニンジャブログ  Designed by 穂高
Copyright © 玄天堂書庫 All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]