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二次創作小説・主にカカイル
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任務後、へたれ気味のカカシが強気なイルカの家へ。
ちょっと大人向け。
カカシ×イルカ(♂/♂):読切


+ + + + + + + + + +
そう手間がかかった訳じゃない。
数をこなせばいいだけの、荒い仕事の頭数。
鞘に馴染んで研がれもしない刃には相応しかろうと、なめた任務を割り振った誰かに当てつけがましく、必要以上に頑張った。
刃毀れだらけの刀は曲がって鞘に収まらないし、クナイにはべっとりと脂が巻いて、使い物になりゃしない。
勘弁してくれ。
六つの時から里の為に働いて、二十年間働き通しで、ようやくもらった里の生活なんだから。
思えばキリキリ胃の痛むような遠い暗雲を窺う防人の、生温い日々はそれなりに気持ちよくて、満足してるんだから。
初めて恋人なんてのもできたし。
だけど手のかかる子犬共の躾が最優先、まだ可愛い人とやってもいない。
なんて真面目な。
その俺に、こんな任務回さないでよ。
〈写輪眼のカカシ〉にさ。


腐った二つ名など放り捨て、せめて寝顔を見たいと思った。
夜天に傾く寒月の仄白い光に照らされ、窓辺に踞った影は黒く、やけに黒く禍々しげに見える。
自分の影じゃないみたいなそれは、きっと月が見透かした俺の本性なんだろう。
獣のように、化け物のように歪んだ輪郭。
「何をしてるんですか」
勢いよく窓を開け詰るように問う人の、心配そうな眼差しが嬉しくて、強ばった口元に笑みをつくる。
「んー、覗き?」
「馬鹿なこと言ってないで、入って下さい」
「今、半分ぐらいヒトじゃないんで。このまま帰ろうかと」
「……とっとと入って、俺の世間体について少しばかり考えて下さい」
不機嫌な振りをする優しい人。
ごめんなさい。


「楽でした。
鈍刀だから返り血を浴びちゃったけどね。
昔とった杵柄っていうの。
そんなもの握りたくないんだけど、むしろイルカ先生のを握りたいというか、ま、俺には他に取り柄もないから仕方がないんですが。
ああ、上手くまとまりましたね。
……ねえ、そうやってポンポン上忍を叩いてると、癖になって受付でもやっちゃいますよ、先生」

風呂に文字通り蹴り込まれて、無理やり飯を食わされて、何とか人間らしく思える程度に引き戻された。
途端に自分が情けなくなる。
格好悪い。
久しぶりの脂っぽい任務に昂ぶって、馬鹿みたいにナーバスになっているのを、一目で見抜かれた。
いつもは玄関に回れと言う人が、窓から早く入れって。
大好きな人の前で、そんなに弱ってる姿を曝したのかと思うと、恥ずかしさで視線を合わせられない。
「呑みますか?」
返事を待たずに酒を満たした湯呑みを突き出すのは、呑めってことなんだろう。上目使いにちらりと様子を窺うと、イルカは困ったような笑みを浮かべながら、じっとこちらを見つめていた。
あの小僧が悪さをしたときと同じ顔。
いつも本気で心配して叱りつけ、それでもすぐに許してしまうイルカ先生。
つけこむように甘ったれて、みっともないところばかり見せている俺を、嫌わないでいて欲しい。



汚れのない、清浄なひと。
そんなことはありえないのに、あなたはそう思える。血の色も死臭もとどめぬ清冽な流れのように、その強さをもって。
軽口に紛れ込ませて本音を漏らすと、イルカは眉間に皺をを寄せ首を振った。
「前に言いましたよね、十三年前に拘ってたこと」
でも、もう拘ってないじゃない。
「俺はけっこう狡いですよ。短気だし、だらしないし……よく知ってるくせに」
他にも色々、と付け足して、照れ臭そうに人差し指で鼻を掻く。その言葉に違わず、姿も中身も里の中忍らしく。
頑固で鼻っ柱が強くてうわばみの、確かに欠点だらけの男だと分かっているけれど、無骨な優しさに惹かれる。
こうして側にいるだけで癒され、腸に淀んだ嫌なものを洗い流されるような気がする。
綺麗で、愛おしい。
「あんまり買いかぶらないで下さい。恥ずかしくて、何もできなくなるじゃないですか」
イルカの指先が額に落ちた前髪を掻き上げる。その関節の浮き出た指だとか、きちんと整えられた四角く大きな爪だとか、そんなものにだって俺は欲情する。
湯呑みを呷る仕草にさえ、鼓動が高鳴り欲しいと思うのに、拒まれたくなくて。
触れるのが怖くて、意気地なく指を咥えている。
「俺は、あなたを困らせてますかね」
そうですね、と真顔で返され胸が痛んだ。
こんなにも大切で、何よりも守りたいひとを、安らがせてあげることも出来ない。
「少なくとも、次から過激なネタはつかえません」
話の脈絡を掴めずに目線で問えば、
「きっと、あなたの言ったことを思い出しますよ。それで、こんなにやらしーこと考えてる俺って……って罪悪感でいっぱいに」
にっ、と嗤う顔が間近に迫る。
「イ…ルカ先生……?」
「どうしてくれるんです」
喉の奥で笑っているイルカの、酔いに潤んだ双眸に疼いて、慌てて身を引いた。
心臓が走りだして今にも飛び出しそうな勢い。
「ごめんね、先生」
動揺を隠して俯いた俺の頭上から、穏やかな声音が降ってくる。
「俺は雑にできてるんで、もっと適当に考えてくれて構いません。心配しなくても大丈夫ですから」
諭すように優しく言われ、泣きたいような気持ちになって、思わず子供じみた弱音を吐いていた。
「無理。正直、怖いような気がするんですよ。何ていうかね……何もかも引っ剥がされていく感じ」
「俺が?」
「イルカ先生が、俺を」
「それが嫌なんですか」
まるで何でもないふうに訊ねてくる。
生徒相手に慣れているのか、そうしたイルカの口調は自白の誘惑に満ちていて、イビキの部隊に推薦してやりたくなるほどだ。
「……中に何が隠れているか分かりませんよ」
舌に乗せた言葉の苦さで笑みが歪むのに、イルカは静かに頷いて、ためらいもせず言い切った。
「大丈夫です」
「先生、その自信はどこから」
「白菜をいくら剥いても芯しか残りませんよ。たまに青虫が出てきて驚くぐらいで」
「白菜、ですか」
茶化している訳ではないだろうが、他にたとえようはないものかと思う。そんなことを考えてしまった頭の中に、鬱々とした懊悩の居場所はなく。
救われたような、してやられたような気分に戸惑っていると、イルカの瞳が不意に細められ、
「好きなんです、白菜が」
思わせ振りな微笑とともに囁かれた。
この人はどうして、こう。
「変な虫が食ってるかも?」
何だって、そんなふうに。
「虫も食わないような白菜を、食いたいとは思いません」
いいように俺を振り回して、甘やかしてなつかせて、一体どうする気でいるのか。
「…………イルカせんせぇ、なんかもー俺、勃っちゃいそうなんですけど」
どうしてくれよう。
「白菜で? あんた変態ですか」
「苛めないで下さいよ」
「苛められたそうにしてるからです」
言い捨てられて、それでも差し伸べられたイルカの両手が、頬に触れる。
力任せに引き寄せられ、乾いた掌に挟まれた頬が熱い。
「カカシ先生……」
少し掠れた声が、腰にくる。
「はい?」
吸い込まれそうな黒い瞳に映る、俺はかなり切羽詰まった表情をしていたけれど、それは目前の人も同様で。
「あんたがカワイイことばっかり言ってくれるから、俺、マジで我慢効かなくなってるんですけど」
「イルカ先生、眼がケダモノになってます」
「いや、冗談じゃなく」
「……いいの?」
「ちょっと黙ってて下さい」
いきなり深く重ねられた唇の感触に、背筋が震える。
熱い躰を抱き寄せて、柔らかな唇と思いのほか器用な舌を貪るうちに、いつの間にかイルカを組み敷いていた。
アンダーに手を滑り込ませ火照った肌を探る俺の耳元を、小さな溜め息が掠める。
「あー……やっぱり俺が下ですか…」
それだけは譲りたくないと訴えている、躰の熱をイルカに押し付けて。
「駄目?」
「………優しくして下さいね」
諦めたような呟きに、ごめんなさいと答えて、背中に爪を立てられた。

〈終〉



【2002/10/25〜2002/10/26:「イルカさんの部屋」:2002/11/27改稿同人誌「浅い眠り」】
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