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二次創作小説・主にカカイル
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Kakashi×Iruka(♂/♂)
暗部君と中忍教師の殺伐出会い編。
※全8回+『楽園の人』前後編で完結。


+ + + + + + + + + +
〜1〜

 昇る月を背に、草深い道を行く。
 イルカが多分に儀礼的な宿泊の勧めを辞して、隣国の隠れ里を出立したときには、既に陽が落ちていた。
 木ノ葉の里まで街道を行くなら丸一日かかる道程も、直線距離なら半日。宿を借りるまでもない。
 任務を果たした帰り道、急ぐこともなかったが、これしきの距離に疲れ夜道を避ける忍と他里に侮られるよりは、獣道の夜行を選ぶ。
 ―――つまらない意地を。
 そんな自覚はある。
 他国の隠れ里へ火影の親書を届けるのは、任務と云うのもおこがましいほど危険も重要性も低いものだが、中忍以上の者が担当する慣習であった。
 たとえ内容が時候の挨拶程度であろうと、封印が木ノ葉隠れの里を表すもので、また他里の長に宛てた文である以上、賊に狙われる場合もある。
 忍同士が奪い合うような密書は、たいがい事前にその重要さを敵に察知されるものだ。そういう意味で、使い走りの中忍を襲わんとする輩が忍者である可能性は極めて低い。
 中忍ともなれば野盗ごときに後れを取るわけもなく、イルカにしても、度々拝命した「おつかい」の最中に、危機感を抱いたことはなかった。
 今までは。

 ―――いる。
 それを感じた瞬間、イルカは細い獣道から飛びのき、樹上に身を隠した。
 頸の後ろが冷たい。
 虫の音が絶えていた。
 夜気を裂き、森を怯えさせた気の迸り。ざわりと全身を総毛立たせる気配には覚えがあった。
 忍が、それも上忍クラスの者が斗っている。
 イルカは息をひそめて、彼方から禽獣を越える速度で迫るものを数え、すぐにそれを悔やんだ。
 ―――速すぎる。
 この場を離れるのは間に合うまい。やむなく地面に降りて薮の中に踞る。後は、彼等が互いに気をとられ、通りすがりの痕跡を見逃す幸運を祈るしかない。
 イルカは静かに息を整えながら、宵闇の向こうに目を凝らした。
 厚く重なる樹影の狭間に、金属の閃き。
 刃を交える人影は、おそらく十を下らない。入り乱れてはいるが、少人数を囲う多勢という二手の図らしい。
 戦力が拮抗しているなら乗じて逃れる隙もあろうにと、眉宇を曇らせるイルカの視界の端を、異形がよぎった。
 星明かりに獣の貌を認めて、息を呑む。
 乱戦の中に、面を被った忍が四人。
 夜目にも鮮やかな白い面と防具は、木ノ葉の暗殺戦術特殊部隊のものだった。

 黒衣に身を固めた敵方は十五、六人ばかり。名高い木ノ葉の精鋭とはいえ小隊ひとつに、随分と人手を駆り出したものだ。
 数に勝る敵はじわじわと移動しながら、暗部を囲う輪を成していたが、一定の距離から包囲を絞りきれずにいる。
 りん。
 場違いな鈴の音とともに、他に先んじて一歩を踏み出した敵が、暗部の一人に弾き飛ばされた。
 暗部と敵の間に、目に見えない壁があるかのようだ。
 緊張の高まった空間に、涼やかな音が響く。
 り。
 耳をすませて出所を追えば、ひときわ大柄な暗部の手に、小さな鋳物の風鈴があった。
 その違和感にイルカが眉を寄せたとき、包囲の輪が動いた。
 中央の暗部達に向かって、四方から手裏剣が打ち込まれ、黒い影が斬りこんでゆく。その攻撃を躱した先では発動した術が待ち構えていたが、それさえも暗部達には届かない。
 四つの白面が闇に踊る。
 目まぐるしい攻撃を紙一重で避けながら、一人、二人と敵を減らしてゆく。
 ―――なんて、強い。
 一時、イルカは脱出の策も忘れ、初めて目にする暗部の斗いぶりに見入っていた。
 鬼神のごとき手練れの中でも、身のこなしが水際立った者がいた。銀灰色の髪をした、長身の男。
 り、りりりりり……。
 風鈴の響きに合わせるかのような、素早く滑らかな動きで忍刀を振るい、誰よりも多くの敵を斬り伏せていた。
 り…りん!
 唐突に風鈴の音が途切れ、大男の暗部が地に倒れた。その背に鎌を突き立てていた敵忍は得物を引き抜く間もなく、別の暗部に頸を落とされる。
 耳鳴りのような音の余韻が止んで、はたと我に返ったイルカは、ようやくその意味を理解した。
 目眩ましだ。大男の操る幻術は弱く、敵のすべてに幻覚を見せるほどの力はなかったが、いかにも怪しげな風鈴を囮に、その音と仲間の動きを添わせることで敵の知覚を惑わせ、自分達の間合いに引き込んでいたのだろう。
 冷静に見渡せば、敵の人数は片手ほどに減っていた。また暗部側もひとりが欠け、長引いた戦闘の為にか、他の三人の動きも重い。
 残った敵の忍はいずれも上忍格。後方に控え、充分に余力を残しているらしかった。戦の常道ではあるが、上忍の露払いと見做される側のイルカには、胸糞が悪いと思える。
 倒れている暗部へ一斉に術を仕掛けた、無情なやり口も。
 だから、思わず。

 銀髪の暗部が仲間を庇って防禦の印を組み、敵の狙い通りの隙をつくったときに。
 彼の背後に忍び寄った敵影へ、クナイを打った。
 もとよりイルカも、自分が咄嗟に放ったものが上忍に通用するとは思ってはいなかった。しかし、それが正確に自分の心臓の位置へと打ち返され、その後に標的までもがついてきたのには驚く。
 ―――やっぱりなァ。
 繰り出される刃を必死で避けながら、確実に迫った死を、どこか他人事のように思う。
 せっかくだからと、生徒相手には見せる機会もない剣呑な術をいくつか放ってみたが、鼠の剥いた牙は噛むにも至らず、かすり傷を負わせるのがやっとで、逆に敵を煽ってしまったらしい。
 間近に迫った敵のまとうチャクラが、印を組んだ両手に収束してゆく。
 ―――終わり、か。
 走馬灯は回らなかった。
 覚悟を決めたイルカの鼻先に、ゆらりと陽炎が立ちのぼる。
 一瞬後、地面から吹き上がった火柱が、獣じみた悲鳴ごと敵を灼きつくしていた。
 直後、炎を隔て、断末魔の気配が続く。
 握り締めていた爆薬を懐に戻し、唐突に静けさを取り戻した周囲を見回せば、敵方の忍はことごとく斃れ、イルカの他に生き残っているのは三人の暗部と、いまひとり。


[続]



2002/09/17〜2004/08/06
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